19XX年4月1日 メイド・グッバイ
◇お仕置き2
「どうだ、この接客なら文句はあるまい?」

 悠然と、綽々と、泰然と。
 シミュレーションを終えたテスラは、いつものように一同を見据える。

「マース-ター……」

 そんな彼の背後から、怒りを滲ませた声が聞こえてくる。

「どうして、マスターの方がくつろいでるんですか!?」

「なにを言う、喫茶店とは癒やしを提供する空間だ。和んでなにが悪い?」

「それはお客さんが、です! 店員が和んでどうするんですか……」

「ふむ……ネオンの料理は絶品だからな、食べたくなるのは仕方ないことだ」

「うっ……そんなお世辞言われたって、誤魔化されませんからね」

「世辞ではない。本心だ」

「う、ううっ……もう莫迦! マスターの莫迦! 知りませんっ!!」

 上手い具合に言いくるめられそうになり、
 ネオンは思わずその場から逃げ出してしまう。

「テスラ君、屋上に行こっか……久々にキレちゃったよ」

「いや、この店には屋上はないが」

「うっさい! いいから来るの!」

「いやー、ゴメンねマスター。
今回ばかりは、流石にあたしもかばい立てできないわー」

「そうです。いい加減、貴方はそこら辺の機敏を感じ取ってください」

 ネオンを除く女子陣に詰め寄られ、テスラはやれやれと嘆息する。

「やはり――接客業とは、難儀なものだな」