19XX年4月1日 メイド・グッバイ
◇ニコラ・テスラの場合

「ふむ、よく来たな。当喫茶店へようこそ」

「今日はひとりか? 
ならば、着いて来い。カウンターで構わんな?」

「これがメニューだ。
ちなみに、今日のオススメはフーゼレークだ」

「これがまた絶品でな、まさしく初恋の味だ」

「さて、注文が決まったら呼ぶがいい。焦る必要はない」

「ん、どうした? 
どうして隣に座って、新聞を広げているかだと?」

「注文が決まるまで手持ち無沙汰でな。
まあ、私のことは気にするな」

「なんだ。もう注文が決まったのか? 
やれやれ、仕方ない」

「ネオン、オーダーだ。
ドボシュ・トルテと紅茶をひとつ」

「ああ、私も食べたくなったので、一緒に出すように」

「待たせたな、注文の品だ」

「……どうして向かいに座って、一緒に食べているのか?」

「ネオンの作るドボシュ・トルテは絶品だからな。
せっかくだから、食べたくなった」

「さあ、遠慮せずに食べろ。味は保障する」

「ん、食べ終わったか。
別に急ぐ必要はない、ゆっくりとしていけ」

「どうして食べ終わったのにまだいるか、だと?」

「食後に適度な休憩は必要だ。
故に、お前も休んでいけ」

「なんだ、もう行くのか? 仕方ない、会計だな」

「では、またの来店を待つとしよう」

「来店、感謝するぞ」