19XX年4月1日 メイド・グッバイ
◇増援「ネオーン、お待たせ!」
「やあ、ネオン。みんな連れてきたよ」
元気な声と共に、イズミとアナベスが姿を現す。
その後ろから、さらに顔を覗かせたのは――
「指定時刻の五分前。良い速度だ、悪くない」
「やあ、ネオン。息災なようで何より」
「やっほー、ネオン。今日はよろしくね」
「ごきげんよう、ネオン・スカラ。
本日はご招待頂き、感謝します」
ヴァルター、ベルタ、ジョウ、エミリー。
統治会の各人であり、ネオンの幼なじみである面々。
「久しぶりね、ネオン。今日はお互い、頑張りましょうね」
彼らの中から、オリエント風の拵えのドレスを纏った、悠然とした美しさを醸し出す女性が歩み寄ってくる。
彼女こそは、フロレンス・アメギノ・ナイチンゲール。
統治会が片翼ソロリティの主催を務める人物だった。
「みんな……あの、今日は本当にありがとう」
集まった面々を見ると、ネオンは感極まって声を震わせる。
予定ではテスラと二人で事足りたはずだが、急な欠員に頭を悩ませていたネオンの要請に彼らは快く応えてくれた。
良い友人を持ったな、とテスラは他人事のように言ったが。
ネオンはそんな友人たちを、心の底から誇りに思っていた。
「もう、なに水臭いこと言ってるの!」
「そうそう。
パパとシャルル先輩は別件が忙しくて来られなかったけど、僕たちならお安いご用だよ!」
「あー! でもでも、アルベールったら、結局、連絡着かなかったんだよ」
「案外、誰かとデートとか?」
「ないない。アルベールに限って――」
「本当に言い切れる? 彼、以外とやるときにはやるかもよ?」
「だ、だ、大丈夫だってば! もうっ!」
ネオンを気負わせないように、いつもの調子でじゃれ合うふたり。
微笑ましい光景に穏やかな笑みを浮かべると、彼女はある違和感に気付く。
「そういえば――」
フラタニティの主宰。
「ライヒ君――」
「ああ、失礼。
ミスター・ウィルヘルム・ライヒですね?」
「ええ、と……彼のことは確か、フラタニティの二人に一任していたのですが――」
言葉の意図を察して、ナイチンゲールは視線をヴァルターとベルタへと向ける。
「…………」
「…………」
一同の視線が集まると、二人は顔を見合わせて沈黙する。
そして――
「忘れて――」
「――いた」