19XX年4月1日 メイド・グッバイ
◇人選

「それで結局、あたしたちはなにをやればいいのさ?」

 全員が出揃うと、ジョウは徐に問いかける。

「ええと、とりあえず……」

「キッチン――料理を作るひとと、ウェイター――お客様の給仕するひとで分けようと思うんだけど……」

 喫茶店である以上、調理をする人間と給仕をする人間が必要になってくる。
 幸いにもある程度の人員は集まっているので、計算してシフトを組めば休憩も取ることができる。

「では、私は給仕に回ろう」

 一番に挙手したのは、テスラだった。

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「……なんだ、お前たち。私が給仕をするのが、そんなに不満か?」

 怪訝そうな顔をする一同を見て、心外だと眉をひそめるテスラ。

「料理ならば、ネオンが適役だろう。
ならば消去法として、私が給仕に回るのは当然だ」

「なるほど。では、俺も給仕に回らせてもらおうか」

 テスラの言い分に納得すると、ヴァルターも続いて挙手をする。

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「……同じような反応をするな。特にベルタ」

 やはり怪訝そうな顔をする一同に、ヴァルターは不服そうに抗議する。
 ベルタは視線を逸らして、ポツリと

「いや、その……貴公が給仕する姿が、想像できないのが本音だ」

「あはは! 確かに!」

「まあまあ、ここは彼らの意志を尊重しましょう」

 思わず笑ってしまったジョウを窘めるように、ナイチンゲールは穏やかに微笑む。

「しかし、接客業である以上、向き不向きは存在します」

 そこで――と彼女はテスラとヴァルターに視線を向ける。

「模擬接客。開店前にシミュレーションで、彼らの適性を推し量りましょう」

 こうして、彼らの接客シミュレーションが始まるのだった。